囚われて、逃げられない
「泰氏くん、お金受け取って?」
「いらない」
「でも……」
「俺が誘ったんだし、カッコつけさせてよ」
「うん…じゃあ…ごちそうさま!!」
微笑み合う二人。そして、ゆっくり歩く。

「泰氏くんは、家どこ?」
「ん?◯◯っていうマンション」
「え!?
もしかして、最上階におしゃれなバーがあるタワマン?」
「あー入居者専用の。
あるよ」
「嘘!?
ねぇ、お願いがあるんだけど……」
「ん?何?」
「今度、そこのバーに連れていってくれない?
確か、入居者の連れなら一緒に入れるよね?」

「うん、いいよ!
なんなら、今から行く?」
「え!?
いいの!?行く!行きたい!!」
目を輝かせて言う、野々花。
泰氏は、更に心が奪われていく。

エレベーターが上がる間。
「楽しみ~」
プレゼントを開ける前のような表情の野々花。
「可愛い」
愛しくて堪らない。
“キスしたい”と思った時にはもう……野々花の口唇を奪っていた。

「ンン……」
口唇を離すと、今度は目を潤ませた野々花がいた。
その姿に身体が昂り、燻ってくる泰氏。
「ごめん……野々があまりにも可愛くて、つい……」
口元で囁く、泰氏。

「ううん…」
最上階に着き、バーに入る。
「いらっしゃいませ。光永様」
「ん。奥、いい?」
「もちろん」
バーテンダーが、奥の個室のドアの鍵を開けた。

「ごゆっくり」
そう言って下がる、バーテンダー。
「野々、どうぞ」
と腰を抱いて、中に促す泰氏。
「うん…」
ソファに座る。

「何、飲む?」
「紅茶、飲みたいな」
「紅茶?」
「うん、ここにブランデー入りの紅茶があるって聞いて、スッゴく美味しいんだって!
私ね、紅茶が好きでずっと飲んでみたかったの!」

「へぇー、じゃあ…俺も!」
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