【SR】hide and seek











「こちら、若村 月子ちゃん。
わたしと同じ都内の女子校に通う、ピッチピチの18歳でーす!」

虚しくはじけた麻美の声だけが、広いリビングに響きわたる。

約束を律儀に守り仕事を終わらせまっすぐ帰ってきた隆之を待っていたのは、麻美とは正反対の物静かな女子高生だった。


無反応なふたりに軽く咳払いすると、気を取り直すように麻美は続けた。


「で、こっちがうちのあにき、眞鍋 隆之。
ほら、月子もしってるでしょ。
隣区に最近できた、進学校に勤めてる高校校医なの。」

あぁと月子は小さく頷き、テーブルを挟んで目の前に座る隆之に会釈をする。

その頬が、少し紅く染まったように感じた。


「麻美ちゃんに、こんな素敵なお兄さんがいるなんて知らなかった。
どうして教えてくれなかったの…?」


月子の黒目がちな瞳が、麻美を見つめている。

そんな瞳に見つめられ、愛想笑いを浮かべたままの麻美に助け舟を出すように、隆之は続けた。

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