七夕の夜、二人で見上げた星空
6.困ったことがあったら、俺に言え

 翌日から、カーストの子たちは私に近寄らなくなった。


 一歳年上の喧嘩最強男子と知り合いで、仲がいいとクラスで噂になってる。

 困ったことがあったら、俺に言え!を耳にして驚いたのだろう。

 同時に、早瀬さんと瀬戸くんの関係も囁かれて教室は話題に尽きない。


 放課後、私が教室の掃除をしていた時、早瀬さんが声をかけてきた。


「帰宅する前に話たいことがあるのだけど、宇佐さん時間あるかしら?」


「私ですか?だいじょうぶですけど……」


「じゃあ、屋上でまってるわね」


「はい……」


 長い黒髪に手串を入れながら話すのが、早瀬さんの癖みたい。

 その姿がクールで格好よくて、同姓の私でも見惚れてしまうほど。

 メガネのレンズを通して見える綺麗な瞳に、思わず息を飲んでしまう。


「私のほうが年上なのに……しっかりしないと……」


 二人っきりで話すなんて、ちょっと不安だけど相手は早瀬さんだ。

 私が嫌がることを言うような性格じゃないのは分かってる。


 教室の掃除も終わって、当番の同級生たちは帰路につく。

 早瀬さんを待たせたら悪いと思って、私は急いで屋上へ向かう。

 階段を駆け上がり、踊り場から野外へ飛び出した私の目に写ったのは……



 見知らぬ男子と向かい合って立つ、早瀬さんの姿だった……




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