もしも、一つだけ願いが叶うなら
「香月、一緒に帰ろ!」

放課後になると、別のクラスの奈央が僕のクラスに入ってくる。

「……良いよ」

僕は立ち上がると、奈央と一緒に校舎を出た。冷たい風が吹いて、僕の穿いてるスカートが揺れる。

「……」

スカートなんて、穿きたくない……。

「……寒い……ん?香月、どうしたの?」

俯いた僕の顔を、奈央が覗き込む。奈央の顔が近くて、僕は思わず後退った。

「……」

僕が黙り込んでると、奈央は無言で僕を抱き締める。

「高校生になってから、香月……悲しそうな顔をしてるよ。どうしたの?」

「……スカートが嫌なんだ。僕は、自分のことを女の子だと思ってない……辛かった。女の子らしく振る舞うことが、女の子なんだからって言われることが……」

僕は、全てを奈央に話した。話し終えると、奈央は「そっか……でも、香月は香月だから!」と僕を見つめた。

「ありがとう……」

奈央の言葉に、僕は泣き崩れた。



僕は空港の近くから、奈央の乗ってるであろう飛行機が飛んでいくのを見つめていた。

奈央は、家族の仕事の都合で海外に行くことになったんだ。しかも、いつ帰ってこれるか分からないんだって。

奈央、今までありがとう……孤独な僕に光をくれて。

僕は何年経っても、神様に願うんだ。

親友に会いたい、と。
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