私の婚約者には好きな人がいる
鳥籠の中
目を覚ますとそこは見知らぬ場所だった。

「ん……」

重い体を起こし、きょろきょろと見回すと、誰もいない。
寝室にいるようだったけれど、そこは誰の部屋なのかもわからず、部屋からでると静代さんと恭士(きょうじ)お兄様がいた。
どれくらい眠っていたのか、すでに窓の外は暗く、外が見えなかった。

「どういうことなの…?」

「起きたか」

「お兄様!説明してください!静代さん。まさか、私に睡眠薬を飲ませたの!?」

「もしもの時にと、旦那様から頂いております」

顔色一つ変えずに静代さんは言った。

「お父様が……。ここはどこなの?」

共犯者の二人は黙った。
暗い林の中にある一軒家で周りには家があるのか、どうかすらわからない。

咲妃(さき)。しばらく、ここにいなさい」

帰してもらえないと気づき、二人の顔を交互に見た。

「どうして?何を言ってるの?私を帰して!」

恭士お兄様は溜息を吐いた。
< 119 / 253 >

この作品をシェア

pagetop