私の婚約者には好きな人がいる
新しい旅立ち
私と惟月(いつき)さんの結婚式が無事終わり、新婚旅行から帰った頃、入れ違いのように閑井(しずい)さんの辞令があり、空港に見送りに来ていた。

「閑井さん、向こうに行っても頑張ってくださいね。仕事を教えて頂いて、本当にありがとうございました」

「いいえっ。そんなたいしたこと教えてないですよ!」

そう言った閑井さんは任されていたプロジェクトを成功させ、夢だった海外支店に異動が決まったのだった。
私も自分のことのように嬉しく、思っていた。

「閑井さんの力が認められて、よかったですね」

「高辻さんが、いえ。清永さんが励ましてくれたおかげで腐らずにやれたんです」

閑井さんが手をさしだし、握手をした。

「それじゃあ、お元気で!」

明るく手を振り旅立って行った。
見送りが終わり、歩いていると、惟月さんが椅子に座って待っていた。

「終わったか」
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