私の婚約者には好きな人がいる
「どこに行くんですか?」

「決まっている。高辻本社だ」

「ええっ!?」

「社長の椅子から、蹴落としてやる」

そう言った恭士さんの顔があまりに凶悪すぎて、私はなにも言えなかった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


私が高辻の本社に再び訪れることになるとは思わなかった。
行きたくなかったけど、恭士さんに逆らえなかった。
私がよっぽど情けない顔をしていたに違いない。
恭士さんは子供の引率のように手を繋ぎ、本社に入ると以前と同じ受付の人が緊張した顔で座っていた。
恭士さんは誰にも目もくれない。
私一人の時とは違って、恭士さんと一緒だと、周りが自然と道を開けてくれた。
というより、避けられてない!?
怯えてるというか。
最上階にくると、ビジネスホテルまできていた秘書達がいた。

「父は?」

「います」

「わかった。まだ気づいてないとは、歳をとったな」
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