私の婚約者には好きな人がいる

ただいま


数ヵ月後―――恭士さんが社長になり、小さな結婚式をし、落ち着いた頃、再び本宅へ帰ることになった。
高辻の本宅に帰ると、奥様と豊子さん、祥枝さんが玄関で出迎えてくれた。

「おかえり!夏乃子ちゃん!」

「みんなー!ただいまー!」

少し離れていただけなのに懐かしく感じた。

「もう高辻の奥様と呼ばないとね」

「まあ、そうしたら、私は大奥様かしら」

奥様はしゅんとして言った。

「おばあちゃんみたいだわ」

「みたいじゃなくて、おばあちゃんになるからな」

「まあ!恭士さん!まさか!」

「じ、実はその、子供ができて。その」

恥ずかしすぎる。

「夏乃子がここで子供を産んで育てたいと言うんだ」

奥様は嬉しそうな顔した。

「まあまあ!何を用意すればいいかしら」

奥様は右往左往した。

「奥様、落ち着いてください!」

「夏乃子さん、奥様じゃありませんよ。お義母様でしょう?」

「あ、そうですよね」
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