私の婚約者には好きな人がいる
憧れの会社勤め

「私もとうとう社会人としてデビューするのね……!」

それも両親公認のもとで。
婚約者の清永(きよなが)惟月(いつき)さんのお家は清永商事という大きな会社を経営されている。
海外での仕事が多く、惟月さんは大学を卒業してからの二年間、海外支店で働いていた。
英語だけでなく、数か国語がペラペラだってお父様が褒めてらした。
お父様が誰かを褒めるなんてこと滅多にない。
仕事ぶりも気に入っていて、私と惟月さんの結婚を一番望んでいるのはお父様なのかもって思うくらいだった。

私が成人した時に惟月さんのお父様と私のお父様が話し合い、婚約を決めた。
会ったのはまだ数回だけだったけれど、初めてあったお見合いの場で私は心を奪われてしまった。
顔が綺麗っていうだけじゃなくて、すごく優しい人で思いやりのある方だってわかったから。
今でも出会いの瞬間を思い出せるくらい。
あの日着ていた着物は私のお気に入りの着物になった。
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