私の婚約者には好きな人がいる
駆け落ち
「あ、あのっ!私がリビングで寝ますからっ!」

「そんなことさせられるわけがないだろう」

「でも、毛布しかないし……」

そう―――惟月(いつき)さんの部屋は必要なものしかなかった。
何もかもが一人分。
一人で暮らすだけの部屋は飾り気のない部屋で私には少し寒々しい気がした。

「一緒に寝ましょうか。半分ずつにすれば、なんとか」

ベッドを占領してしまうのは申し訳なさすぎて、提案すると惟月さんは呆れた顔をした。

「眠れるか!」

「え?」

「いや。一人で寝る」

惟月さんの意思は固い。
やっぱり、私に魅力がないから?
子供っぽいから……。
がっくりと肩を落として、ため息を吐いた。

「なんだ?」

「いえ、なんでも」

しょんぼりしていると、惟月さんは苦い表情をして言った。
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