呪いで幼女になった聖女ですが、置いてけぼりにされた上に魔王に拾われました。でも結構幸せです。
「ごめん! レティシア! そこで敵を足止めしておいてくれ!」
子どもに戻ってしまった人間に言う言葉だろうか。
森に消えていく勇者たちの後姿を見つめながら、レティシアは絶望した。
分かっていた。
あの一行の中で、レティシアは随分と浮いた存在だったことを。
お世辞にも真面目とは言い難い勇者たちは、国からお金を貰い、民からは歓声を浴び、ちやほやされることに快感を覚えていた。
いつしか、魔王を倒すという目的を忘れ、ただもてはやされて美味しい思いをしたいがために旅をする堕落した集団になってしまったのだ。
勇者は、「このまま魔王倒さなくてもよくね?」とまで言ってしまう始末だった。
とても勇者とは言い難い、欲に塗れた一行の尻を叩いていたのがレティシアだ。
行きたくないとごねる彼らをどうにか説き伏せて、及ばずの森までやってきた。
文句を何度も言われながら。
――そして自分は置き去りにされた。
よしんば予測不能の事態に陥って混乱した故の行動だとしても、迷いもいっさいない素振りからそれだけではないと分かる。
もしかして、元から皆でそうしようと決めていたのだろうか。
(そうだとしたら……酷い)
レティシアを森の中に捨てるつもりでここに来ることを賛同したのだ。
そして、絶好のチャンスがやってきた。
加えて、おあつらえ向きとばかりに強力な魔力の持ち主がやってきている。
口煩い邪魔者を始末するにはこれ以上の場面はない。