おもいでにかわるまで
そしてその場は一旦落ち着き飲食が開始されると、話し出す事といえばやっぱり女の子の事だった。

「学年で一番かわいいのって誰だと思う?」

「そりゃあ、間宮じゃない。」

あっ・・・。

間宮仁美の名前を聞くと、勇利は後ろめたい気持ちになって、いつも少し硬直する。やっぱり仁美は目立つのだ。

「確かに。でも、お前らやめとけ、仁美ちゃんは俺に惚れてるからよー。」

「そそ、そんなわけないでしょっ。」

「・・・でもさ、間宮ってさ、自分が可愛い事気付いちゃってるじゃん。そこが嫌い・・・。」

明人の言葉を受けて一同が凍りついた。普段何を考えているかわからない所のある明人の、なんだか鋭い指摘に勇利も相槌が出来ない。自分はこんなにも仁美の事が好きなのに、人によっては感じ方が違うなんて、勇利にしてみれば不思議な感覚なのだ。

「ばっか明人お前は女知らないのか!そんなの当たり前だし、可愛い子はそれでいいの!」

「そうそう、ひとみー。」

「明人、間宮は良い子だよ。俺にはわかるし。」

「えー、まさか勇利マジなの!?やめとけって。」

そうして料理を食べたりゲームをしたり女の子の事を話したりで今日も解散になると、堀田の家から駅まで全員で連れ立って帰った。勇利は明人と並んで歩く。

「明人さあ、三学期はあんま学校さぼんなよ?どっか悪いの?」

「別に。ただ朝起きるのだるいだけだよ。それよりさ、間宮の事悪く言って、なんかごめん。」

「な、なに言ってんの!?別になんとも思ってないし。」

「そうか、ならいいんだ。外野がどうこう言うことじゃないしな。うまくいくといいな。じゃあな勇利バイ。」

なんだよそれ・・・。うまくって・・・。俺、間宮には弟みたいにしか思われてないし、全然自信ないからね・・・。

告白もしていなければ振られてもいない為に、実は勇利の気持ちは消化不良のままだった。
 
それでも今日の空は空気が澄んでいて星が綺麗だ。

こうして季節は巡り、それぞれの場所でまた1年、彼らは大人になっていった。
< 14 / 265 >

この作品をシェア

pagetop