お嬢様は恋したい!
あ、陸斗さんに合コンの事とか話さないとだよね。

「私、ちょっと用事があるので先に行きます。」

2人と別れ、エレベーターで重役フロアに行き、専務室のドアをノックした。

「どうぞ。」

陸斗さんの声がしたので、中に入る。

「失礼しまぁす。」

陸斗さんは、時間が惜しいのかおにぎりを食べながら、PCから目を離さないでいた。

「何?」

お仕事モードなのか、いつもの明るい感じより少し固い感じで聞かれる。

「あの…陸斗さん?」

名前で呼ばれた事に顔を上げ、初めて私と気付いたようだ。

「香ちゃん。どうかした?」

一気に鈴木主任や私といた時のプライベートっぽい陸斗さんに変わった。

「お仕事、忙しいところすみません。」

「いいって。香ちゃんなら、喜んで。」

にこにこしながら、応接セットに座るように勧められた。

「あの…陸斗さんに聞きたい事がありまして。私とお試し交際中なんですが、その…合コンに誘われまして。」

「いいよ。行ってきても。香ちゃんは、まだお試し中だし、もっと好きな人が出来ればそれはそれ。」

「いいんですか?」

「僕の立ち位置は、彼氏と保護者の中間みたいなものだと思っていいよ。僕は復縁出来なくても亜季がまだ好きだし、君は事情がありそうだ。どうしても相手が見つからなくて、それでも結婚したい時の切り札だと思ってくれていればいいからね。」

「どうしてですか。」

「僕は一誠が大好きなんだ。だから、あいつがいま可愛がっている香ちゃんを一誠の手が届かない分、守って安心したさせてやりたい。そう言う意味では、香ちゃんに優しい男じゃないからね。君がここから去った後、他の男を好きになって苦労しても助けようと思わない。」
 
「つまり全て鈴木主任のためですか。」

「そうだよ。でもそっちの趣味はないからね。」

ウインクしている陸斗さんは、優しそうな顔をしているけれど、本当は優しい人じゃないかもしれないと思った。




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