お嬢様は恋したい!
「お父様、横暴です。私、自分でお相手を見つけますから、笠松さん?にはお断りしてください。見つけるまで家には帰りません。」

「待ちなさい。香子!」

私は、お父様を無視して、立ち上がった。
家を出て、行く当てもなく彷徨ったあげく、いつも利用しているクインホテルTokyoのスイートルームに腰を落ち着けて、数分でチャイムが鳴った。

ルームサービスが食事を持って来たと思いドアを開けると

「やはりこちらでしたか、お嬢様。」

お父様の秘書、川田さんが立っている。

もちろん後ろにはお父様付き。

「な、なんでここがわかったの。」

「お嬢様、家出に社長の家族カードを使い、さらにクインホテルをご利用されたら…」

なるほど家出中はお父様のカードや知っている場所は利用しちゃいけなかったんだ。

「香子、そんなに笠松くんが嫌なのか。将来、笠松グループのトップになる優秀な男らしいぞ。それに年だって香子の7つ上とちょうどいい。」

「お父様、そんなにおすすめするならお父様が結婚すればいいじゃない。」

「いや、私には愛する百合子がいるし。」

返事として妥当なのか、一瞬首を傾げたくなる。

「とにかく私は会った事もないまま、結婚しようと言うのが嫌なんです。」

「しかし笠松くんは今、海外赴任中で忙しいらしく来年の1月まで帰国は難しいらしい。しかも会社の機密に関わる案件らしく、こちらから訪ねていくわけにも。」

「いまはテレビ電話とかあるじゃない。直接じゃなくても、私は大学卒業してお稽古以外空いているのよ。」

「笠松くんは無愛想なので直接会わないとお前に嫌われてしまうと心配しているそうなんだ。」

いや、この状況がもう嫌われると思うわよ。

「とにかく私は恋もしないまま、いきなり結婚なんて嫌です。あ、それなら笠松さんが帰国するまでに私が好きな人が出来て、プロポーズされたら、笠松さんにお断りしてその人と結婚していい?」

「いや、それでは…」

川田さんが私たちの会話に口を挟んで来た。

「社長、いいじゃないですか。期限は結婚式の準備もあるでしょうから、半年後の11月末まで。その間は高階の財力に頼らず自活するってことで。」

「いや、川田。」

「いいですね。お嬢様は《《ひとりで》》生活出来なきゃ、帰ってくればいいんですよ。」

「分かったわよ。やってやるわ。」

私は川田さんの言葉につい乗ってしまった。



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