お嬢様は恋したい!
第9章
クリスマスイブ、恋人達が楽しい時間を過ごしているなか、私は当座の着替えを入れたスーツケースを持って、京都駅に降り立った。

京都の別宅は、お母様が京都支社に来たとき用に交通の弁のいい河原町からすぐの3LDKのマンション。

ベビー用品は、お母様が京都に来た時に買いに行くと張り切っていたので、任せる事にして自分の生活のための準備だけする事にした。

お母様の会社は主にキッチン雑貨の製造販売をしていて、お母様がお祖父様の後を継いだもの。

だからお母様の実家があった京都が創業の地で、後を継いだお母様の利便性の為だけに本社を東京に移したので、マンションの一室が本社と呼ばれて、工場も大半の社員も京都にいるという不思議な会社だ。

年明けからパートでお世話になるのは、総務課。

お母様が無理矢理ねじ込んだ身内のパートさんとなると腫れ物扱いかお客様扱いもしくは媚を売るのかな。

先月までが、色々楽しかったから不安しかない。

スーツケースをマンションに置いてから、近くのスーパーマーケットに買い物に行く事にした。

ひとりぼっち…じゃないか。

チビちゃんとふたりぼっちのクリスマス。

いく日か分の材料を選び…そう言えば一誠さんといた頃は料理なんて出来なかったのに、たった1ヶ月そこらで自炊する気になるって変われば変わるものだなと思う。

最後に惣菜コーナーでフライドチキンの小パックと一人用のミニケーキをカゴに入れて、レジに向かう。

前に並ぶ5歳くらいの女の子と母親を見て、私もあんな風になるのかなと未来を想像して、これからの生活が少しだけ楽しみになってきた。

かずまさんに病気を理由にお断りする以上、私が妊娠していると知られないように自宅に置いておけないというのは分かる。

ほとぼりが冷めるまで、もしくは出産するまでが京都に私が最低限いないといけない期間になるだろう。

ボロアパートでも一人暮らしだったのに、やたら寂しくなっているのはあの頃は一誠さんがいたのに今はいないからなのかな。

会いたい…でも会えないよ…

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