お嬢様は恋したい!
社食は、メニューが定食2種類の日替りでカウンターでAかBと選ぶだけ。

他のものが食べたい人は、外へ出かけたりお弁当持参するらしい。

もちろん私は毎日、ここでいいわ。

食費と出会いの両得だもの。

A定食のアジフライをトレイに載せるとキョロキョロと恋のお相手を探した。

「高橋さん、こっち、こっち。」

私が2人を探していると思った浅田さんと島本さんに手招きをされ、2人のいる4人がけのテーブルに座る。

今日のところは、2人に色々と教わることにした。

漫画や小説でも職場の同僚と恋愛で揉めるなんてシーンあるし、女同士の拗れたあとの付き合いほど難しいものはない事を女子校、女子大と女の園で育った私は痛いほどよく知っている。

「高橋さんて、22だよね。」

「はい、3月に明和女子大を卒業しました。」

「すごーい。お嬢様大学じゃない。」

「でも就活、出遅れて派遣ですけど。アハハ。」

どうせ履歴書とかで出身大学はバレるから、有名大学出たけど、就活失敗したような顔をする。

まだ2人がどんなタイプか分からないから警戒は怠らない。

「でもあんなお嬢様大学じゃ、すぐに結婚とか出来そうじゃない。」

「それは親がそれなりの財力がある場合ですよ。うちは貿易会社で使われている身なんで。」

全てが嘘ってわけじゃない。

財力はあるし、お父様は高階商事の社長だけど、高階グループ会長のお祖父様には頭が上がらないし、社長なんて会社に使われてるようなものだ。

「ふーん。お嬢様じゃないんだ。」

「私は派遣会社の寮住まいで、社食がタダで食費が浮いたって喜んでます。」

こころなしかさっきより2人ともフレンドリーになった気がした。

「高橋さんって彼氏いるの?」

「いないです。」

「じゃあさ、合コンしよっ。」

あら、浅田さん。いい人じゃない。

「うちの工場の中にもイケメンいるわよ。同期で良ければ紹介するから。」

「よろしくお願いします。」

「でもさ、高橋さんも大変だよね。」

「何がですか。」

「あの主任の担当だものね。」

「それはどういう…」

「見た目はいい方だけど、人使い荒いし、細かいし。全く優しくなくて松田さんが産休に入ってから派遣の子が何人か来たけど、みんな自信なくして短期で辞めちゃうから困っていたのよ。」

「は、はぁ。」

「まぁ、主任に色目使って本人に撃退されたってのも何人かいるけどね。」

「だから私たちがいい男を探してあげるから途中で辞めないでよね。」

2人は優しいのか、鈴木主任のせいで、これ以上自分たちが迷惑を被らないためなのか、わからないけど私に男性を紹介してくれるという事で話がまとまった。

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