お嬢様は恋したい!
入籍したのは、4月1日。

新年度の始まりの日だから、二人のスタートにいいだろうと決めた。

ただ市役所に届を出して、その場で写真を撮ってもらうと一誠さんは笠松グループの入社式に出席のため、慌ただしく出かけて行ったから、ふたりだけのお祝いは出来ず、夕食時、私の家族がお祖父様の家に集まり、和やかな食事会をしたのだった。



「香子?」

「ちょっと色々思い出して、浸っちゃった。お父様、いままでありがとう。」

「これからは一誠くんと仲良くな。」

扉が開き、私たちは一誠さんの待つ場所に向けて歩き出した。

誓いのキスが長すぎて牧師さんが、咳払いしたのはあまり思い出したくないが、神聖な場所で誓うと婚姻届を出すのより感慨深いものがある。

式の間、私たちから離されてぐずるんじゃないかと心配した一叶は、お母様の手から秀介さんに託されるとご機嫌になり、抱っこされて気持ち良さそうに眠っていた。

秀介さんとの縁は不思議なもので、一誠さんからしたら、私を巡ってライバルとも言えるけれど彼がいなければ、私たちの再会もなかったかもしれないから感謝もしていて…

しかも一叶は、パパより秀介さんがお気に入りみたいだから、そういう意味でも微妙らしく…

それでも気の合う部分もあるから、友人?に数えているらしい。

式の後は、本当にこじんまりと両家の家族…笠松のお祖父様と写真たての中の琴子さん、うちの祖父母までとなぜか一叶を抱いたままの秀介さんで食事会をした。

秀介さん、いつの間にかうちの家族にカウントされているけど、いいのかしら?

「一誠さん。」

「香子。」

視線を絡ませ、どちらからともなくキスを交わす。

結婚式と食事会の後、せっかくだからとホテルに一泊することにした。

一叶は、お祖母様が一晩預かってくれると言っていたが、秀介さんが泊まるとか言ってたから多分、秀介さんがベビーシッターなんだろう。

お祖母様は、きっかけを作ってくれたこともあるが気に入ったのか秀介をやたら家に呼ぶし、秀介は嫌じゃないのか私たちがいない時でもオフにうちにいるのよね。

一誠さんは「あいつが小姑か?」と苦笑いしている。

でもおかげで一叶が、ぐずらずお留守番してくれたから感謝しないと。

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