クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~
「私とお嬢様の関係をすでにご存じだった、と…?」
「ああ、知っていた。娘のことはいつも見ていたからな。…いや、信頼のおける者に探らせていた、と言う方が正しいが」

まったく、気付かなかった。
もちろん、芽衣子も気付いていなかったに違いない。

俺は困惑した。

岸議員は芽衣子を、自分が理想とする大和撫子にすべく、手塩にかけて育ててきた。
一見それは親の愛情行為のように見えるが、逆に俺は芽衣子への関心の無さの表れだと思っていた。

まるで人型をした木工に自分好みの容貌を彫り込んで人形を作るように、一方的に自分の理想を押し付けて、その通りの人物になるよう支配する。
そこに芽衣子の価値観や個性を尊重する意思はない。娘への興味関心など微塵も持っていないのだと思っていた。

探らせるという行為も、そこまで芽衣子を自分の監視下におきたいという支配欲の表れなのだろうか。

いやだが、そうだとしたら、北村から報告を受けていたとして、何も行動を起こしてこなかったのはおかしい。
『人形』が反抗をみせて黙っているはずがないではないか…。

…もしかしてこの人は。

芽衣子のことを、むしろ誰よりも―――。
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