クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~



初めての夜の後、彼女は少し疲れた色を残してこんこんと眠った。

痛くしなかっただろうか。彼女の記憶に一生残る夜を、嫌な思い出にしてしまわなかったろうか。
そんなことを気にしながら、彼女の寝顔をずっと見ていた。

彼女の髪は乱れ、何度もキスを重ねた唇からはルージュの色が失われていた。
けれども、そんなしどけない姿もたまらなく綺麗で、つい数時間前の濃厚な時間を思い出して昂ってしまう。

「うん…」

そんな俺の視線が妨げてしまったのか、彼女の長い睫毛がゆっくりと開いた。
情交の疲れを残した瞳はぼんやりとしていたが、俺の姿をとらえるなり驚きの色を浮かべる。

「まだ寝てていいよ。疲れているだろう?」

彼女の頬を擦りながらそっと囁くと、彼女は恥かしげに目を伏せた。俺との時間を思い出したらしい。
そんな初心な反応がたまらなく愛らしくて、俺は低い声音で続ける。

「身体、辛くなかった?」

彼女は目を伏せながらうなずく。
気遣いではないだろう。彼女の乱れ方は到底演技には見えなかった。

俺は誇らしいような嬉しい気持ちになって「じゃあ気持ちよかった?」と訊こうとしたが、抑えた。
訊いたところで、きっと彼女は顔を赤らめて返答に窮するだろう。彼女はそんな女性だ。
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