仮面
「あぁ……っ」


デパートを出て近くの公園に入り、仮面を脱ぐとリナは思わず大きな声を上げた。


仮面をつけているときはまるで自分が自分じゃないような気分だった。


仮面の動きに身を任せていれば絶対に失敗することもない。


リナの持ってきたバッグの中は商品でパンパンに膨れ上がっていたが、どれひとつとして万引きしたことがバレてはいなかった。


絶対に無理だと思っていたものまで簡単に盗んでくることができてしまった。


リナの顔に満面の笑みが浮かぶ。


この力さえあれば、もうクルミにバカにされることもなくなる。


家計だって裕福になる。


どんどん盗みになれて行けば、現金を盗むこともできるようになるかもしれないのだ。


リナは輝く瞳で仮面を見つめた。


これは神様が私にくれたプレゼントに違いない!


「ふふっ」


自然と笑みがこぼれてくる。


そうだ。


これはお店だけじゃなくて、個人の家でだってきっと使える力だ。


教室でクルミの万年筆を盗んだときのように、個人の家に侵入して盗んでくればいい。


そっちのほうがずっとリスクが低いように感じられた。
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