追体験アプリ
言えない
学校へ言ってまともな会話なんて少しもせずに帰宅する子供がどのくらいの人数いるんだろう。


私は下駄箱の前でぼんやりと立って意味もなく思考を巡らせる。


小学生とか中学生ならまだわかるけれど、私はもう高校生だ。


友達の1人も作ることができないなんて情けない。


私は自分に失望しながら下駄箱の中に手を突っ込んで白い運動靴を手にとった。


しかしそれは今朝とは違ってボロボロに切り刻まれていて、とても履けるような状態ではなくなっていた。


学校へ来てほんの数時間の間に変貌してしまったみたいだ。


何度も洗って何度も乾かして丁寧に使っていた靴だけれど、これじゃさすがに捨てるしかなさそうだ。


心はフィルターがかかったように鮮明でなくて、もしかしてこの靴は私のものじゃないのかも? なんて、楽天的な考え方まで浮かんできてしまい、ゴミ箱へ近づいたときに3人組が影から出てきたものだから、その楽天的な思考回路はすぐに閉ざされてしまった。


ゴミ箱に靴を投げ込むとガコンッと重たそうな音がした。
< 40 / 170 >

この作品をシェア

pagetop