Letter - 大切な人 -

 竜はマグカップをテーブルの上に戻して通話ボタンを押した。

「もしもし」

「え? 智樹が起きた?!」

 ドクンと心臓が鳴る。
 体ごと飲み込まれてしまいそうなほどの動機。

「……え?」

 竜の声が小さくなる。

「今、くぅの部屋に……うん」

「分かった、連れて行くよ」


 最後の方は声のトーンが低くなっていく。

 通話を終えた竜は両手をテーブルに乗せたまま何かを言おうとしているが口は動かない。

 美利は竜の上着の袖口をしっかりと握って無言で訴えている。

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