Letter - 大切な人 -
第十章 秋の空
「探したぞ。帰ったかと思った」

 そう言って美利の隣に座る。

 手のしびれをほぐしながら美利も上半身を起こし座り込んだ。

 空を見上げる。
 あと一時間もすれば足元も見えずらくなる暗さだ。

 腕を伸ばしてストレッチする。

「テスト前で部活が休みだからってこんなところで寝てるなよ。風邪引くぞ」

 そう言って小さく笑う彼に、

「うん、流石に寒い」

 と苦笑いを返す。


「もうこんな季節だけど、ここ好きだよな、くーは」

 智樹は正面を向いて空を見ながら言う。

「うん」

 小さく返事をした。
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