粗大ごみを拾ってしまった(恋する冥府の王・死神シリーズ2)

粗大ごみの正体・18-20ページ

<加賀城の正体・ミイヤの部屋・午前8時50分>

バタン・・ガチャガチャ・・
鍵の閉まる音が響いた。

その後・・静寂・・

カツン・カツン・・カツン

ベランダのレースのカーテンが
かかっているガラス戸に、
何かが当たる音がする。

加賀城は目を開け、横向きになって音のする方を見た。

大きな黒いカラスが、
くちばしをガラス戸にぶつけているのが見えた。

加賀城はそれを無視して、枕に顔をつけてうつぶせになった。

そのカラスの執拗(しつよう)な態度に
「ああ・・まったく・・しつこいな」

しかたないように、ベッドから起き上がり、
カーテンを開けて、
ベランダにいるカラスを入れた。

カラスが
じっと加賀城を見上げている。

「何か用か?大森」
大森と呼ばれたカラスが・・
しゃべった。

「瞑王様、お探ししました!
何ですか!?そのかか・・
恰好は!?」

瞑王と呼ばれた加賀城が、
<これはなんだ?>というように
(ひたい)のジェルシートを
はがした。

次に、
自分のはだけた女物の浴衣(ゆかた)を見て、苦笑した。

「<人の男>になったら・・
タイミング悪く、病気かかって、
高熱が出てしまった」

「なな・・なんで、こちらに連絡をなさらないのですか!!」

大森カラスが、怒気(どき)を含んで、大きな声をあげた。

「あなた様は冥府の王なのですよ。お立場をお考えください」

瞑王はカラスの勢いを、
制止するように、手をあげて・・
まったく悪びれた様子はなく

「悪かったな・・
鍵も携帯も忘れてしまって・・
そうしたら、
隣の<人の女>に拾われた」

「だめです!
下手に行動をすると・・
また問題が起きますから・・

護衛の私の立場も考えてください。すぐにお戻りください!」

大森カラスが足でつかんでいた
405号室の鍵を、
ずずっと滑らすように、瞑王に向けて動かした。

瞑王はカラスの態度には、もううんざりというように

「わかっている。すぐに戻る。
お前は先に行け」

大森カラスは、瞑王が不機嫌なのを察して、
すぐにベランダから飛び立った。
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