粗大ごみを拾ってしまった(恋する冥府の王・死神シリーズ2)

粗大ごみの調査・28-34ページ

<ミイヤの部屋のベランダ・17時10分>

瞑王はミイヤをベランダの鉄柵に
釘付けにするように、

片手をミイヤの手首を握り、
そのまま体を固定してしまった。

「君は
中身と外が相当に違うな。
外は硬い殻で覆っているのに
中は甘くてトロトロの果実のように・・・」

瞑王は
ミイヤの手首を固定したまま、
首筋に顔を寄せた。
その耳元でささやく。

「俺はそんな女は嫌いじゃない・・・
殻を割って中身を味わいたい・・」

「私は・・
食べられないよ・・
だってもう賞味期限は、
とっくに過ぎているから・・・」

遠い所から響くような声に・・
つい答えてしまう。

言葉の全てが断片のようになって
浮遊してしまい、
とりとめがなく流れていく。

瞑王のささやきは続く。
「服装はいつも紺かグレーの地味なスーツ姿なのに・・・

下着は
まるでレースの花束のようなのを着けてる・・
あざといな」

<あざとい>って・・
普通・・女の人って、レースの下着を買うよ・・・

ミイヤはぼんやりと、この人は
いつ私の下着を見たのだろうか・・・
瞑王の唇が、すぃと肩から上に首筋をすべる。

ここは外のベランダだけど・・
4階だから外からは誰かに見られる事はない・・

ミイヤは思った。
次は何を仕掛けてくるのか・・・

瞑王は楽し気に
「白とかピンクとか・・
淡い色合いでやさしげな少女みたいな感じだが・・

それでいて透けるのを、計算しているのだろう。」

「計算って・・・
バーゲンセールで買うから・・
安く買うけど」
ミイヤは普通に答えてしまった。

昨日の郵便受けに
次のバーゲンセールの案内状が、
はがきで届いていたっけ・・

思考が、とんでもなく関係ない方に飛んでしまう。

この会話はセクハラだよ・・・
ミイヤは、
とてつもなく遠い所の会話に感じていた。

この人は下着フェチなのか・・
それとも評論家か?

「黒とか紫も、
いい感じだと思うが・・・
どうだろうか?」

この状況でなぜ、疑問文になるのか・・・

どう答えればいいのか・・
思考がまとまらない。

「黒は・・・好きじゃない・・
だから」
誘導尋問のように、しごくまっとうに答えてしまう。

黒とか濃い色は・・
あと、柄物は確かに買わないな・・・・

ブラとパンティの入ったクローゼットの引き出し・・

確かにきれいに並べるのにはこだわりがある。

でも
下着を干す時は、見えないように、
部屋干しするしかなくて・・・
あと・・
手洗いしないとレース部分が傷むし・・
手がかかる。

瞑王はぼんやりと受け答えするミイヤを見て、
口角を少しあげた。

「男を喜ばすためか・・?」
瞑王が耳元でささやく

「それは・・・ちがう・・
レースが好きなだけで」

<普通女の人って
きれいなものを身につけていると、気分があがるでしょ。>

ネイル好きの女友達も言っていた。

<パソコンのキーボードを
打つ時の指先が美しいと、
モチベーションが上がるって>

でも、この人はなんで、
こんな場所でレースの下着談義を
仕掛けてくるのだ?

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