粗大ごみを拾ってしまった(恋する冥府の王・死神シリーズ2)
<加賀城の部屋のベランダ・18時15分>

ミイヤのベランダから
飛び立ったカラスは一周旋回して、
隣の405号室のベランダに留まった。

空はとっぷりと暗闇に包まれ、
柔らかな風が吹き抜けている。

「夕暮れの闇は・・心地よいな」

カラスから
瞑王は加賀城の姿になっていた。

瞑王も、ベランダの手すりにもたれかかった。

「上条・・ミイヤといったな」

隣のベランダの仕切りに
目をむけた。

あの座敷童は・・・・
姉から俺を引き離そうとして、
一瞬の隙をついて
俺にのり移った。
そう、
俺がキスをしようとした時だ。

さすが、ガキではあるが
霊格の高さで、
俺を乗っ取ろうとした。

・・そうはさせないが。

あの時に
「抱きしめて」と言ったのは
座敷童の思考だ。

ずっと長い間、
座敷童は寂しかった・・

その思いが口から出たのだろう。
それともどこかで
座敷童と俺の波動が、
何らかの形でシンクロして、
融合してしまったのか、

そう言えば、
あいつと名前の音、韻もよく似ている。
<かがじょうたけし>と
<かみじょうたかし>

偶然ではないだろう。

俺と何かの接点が、あるのかもしれない。

迎えの天使は
あのガキを<神候補>と言っていたが、
元々は神系の者かもしれない、

何かの理由で一度、
地上に落とされた御神体か?

まぁ、
俺も天界から落とされた身ではある・・
今は神・・
死神とも呼ばれているが。

でも「キスして・・」は、
座敷童の想いではない・・・

あのガキにその発想はなかった。

そもそも神は
そんな下ネタ系肉食・・
下心はないはず。

あれは俺だ・・
俺の思いが伝わってしまった。

こんなに思考が漏れて、
混線してしまうとは・・初めてだ。

なぜ「キスして」と
言ってしまったのか、自分でもわからない。

相手に<身をゆだねる>
なんてやった事がないのに。

それも<人の女>なんかに・・・

何となく指先を、唇に持って行く。
< 34 / 57 >

この作品をシェア

pagetop