粗大ごみを拾ってしまった(恋する冥府の王・死神シリーズ2)
<地域の祭り・カラオケ大会会場・17時30分>

荘厳な音楽が流れ始める。

最初の人とは異なるマジシャンが、スポットライトに照らされ登場した。

今度の男は、
オペラ座の怪人のようないでたちだった。

マジックに使われる大きな飾りのついた箱を、ワゴンに乗せてステージの中央に置いた。

そこで照明が落ちた。

黒いマントをひるがえして
仮面のマジシャンが、箱の周囲に置かれた松明に、
次々に炎をつけていく。

その明かりの中で、マジシャンが大きな剣を、振りかざした。

剣の切れ味をリンゴを切ることで、観客に確認させる。

そして箱に剣を次々と刺していった。

最後の剣が刺されると、
マジシャンが箱の正面を
観客に見せるように開けた。

箱の中は剣が交差しただけで、
がらんどうの状態にしか見えない。

もう一度、マジシャンが箱をくるりと回すと、大きな花火が噴き出て、箱の上部が開いた。

火花の中でマイクを持った璃音が、立っていた。

「すごい・・・」

ミイヤは手を口にあてて、
ステージ脇で食い入るように見ていた。

松明の明かりの中の璃音は美しく、<降臨>と言うべきなのだろうか、

カリスマオーラに満ちていた。

空気が違う・・・
人々はしんと静まった。

ゆっくりとバラード音楽が流れはじまる。

璃音の歌声が、会場に響く。

切ない恋、
狂おしく、かなうことのない愛。

それでもなお、
その姿を求めてしまう。

その声を聞きたくて、風の中で耳を澄ます

そんな内容の歌詞だった。

歌い終わると、璃音は頭を垂れ、
手を軽くあげた。

そこで照明がおちて、ステージは暗くなった。

拍手は・・ない・・
夢の世界のように・・

観客はぼんやりとしているように見えた。

「ほうっ・・」
ミイヤはため息をついた。

しばらくして・・・
パチパチ・・・ワァー・・・

拍手と歓声が怒涛(どとう)如く(ごとく)あがった。

加賀城剛士と同じ人には・・
思えない・・すごい人なんだ。

ステージの撤収が始まり、
気が付くと、
璃音も大森の姿はなかった。

「皆様・・・」

花火大会の始まりのアナウンスが流れる。

現実世界に戻ってきたように、
ステージ前から観客が移動を始めた。

皆、花火のよく見える場所に早く行きたいのだろう。

ミイヤは決意していた。
<あの事を、
加賀城に言わなくては・・>

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