粗大ごみを拾ってしまった(恋する冥府の王・死神シリーズ2)
<次のゴミ回収日>

ゴミ回収車は置いてあるゴミのすべて持って行ってくれた。

ミイヤはほっとした。
人と争う事は本当に嫌だ。
無理だと思ってしまう。

そうだ、
今日は少しだけ贅沢をしよう!

ミイヤのささやかな楽しみは、
花を買う事。
どんな花を選ぶかと思うと
心がウキウキする。

本当はバラの花を、100本くらい買ってみたい。
香りのよい花が好きだ。
フリージアとかすずらんとか。

店で売っている花たちは、
見た目は美しいが、香りが薄いものが多い。

もし、
どこか田舎で、広い庭付きの一軒家に引っ越したら、
梅とか植えたい。

あの、梅の花の香り・・・
夜の梅の香り・・
菅原道真公が、愛するのには共感できる。

もちろん猫も飼う。
鳥のさえずりが聞こえる中で、
日向ぼっこしながら、のんびり本を読みたい。

そばで猫が寝そべって・・・

木漏れ日がゆれて、
雲がゆっくりと、たなびいていくのが見える

そんな生活ができたら・・・
どんなに素敵だろうか。

夜の仕事帰りに花を買った。
今日は百合の花。

1本しか買えなかったけど、
腕の中で花を抱えるとうれしくなる。

その百合の香りを吸い込むと、
嫌なことはどうでもよくなる。

ミイヤは花びらを傷つけないようにそっと抱え、
エレベーター乗った。

扉が閉まりかけた途端、
また、開かれた。

<開>のボタンを押して駆け込んで来たのは、

例の粗大ゴミこと・・
加賀城だった。

加賀城はチラッと、エレベーターの隅にひっついているミイヤを横目で見た。

ミイヤは花で顔を隠すようにしたが・・
仕方なく軽く頭を下げる。
どうにも気まずい。

加賀城も軽く頭を下げ、ミイヤに背をむけた。

ミイヤの前に、背を向けて立つ加賀城は、
思ったより背が高く、黒いコートで全身黒づくめだ。

髪は黒髪で長め、前と同じ黒縁の
眼鏡をかけている。

そして黒の本革のトートバックを
肩にかけている。

全体を黒でまとめているが、スタイリッシュで高級感のある服装をしている。
何の仕事をしている人だろう・・

地味な感じにしているが、
ちょっと普通の勤め人ではない。
バックを持つ手首には、
細い金鎖のブレスレッドが光っていた。
< 7 / 57 >

この作品をシェア

pagetop