Tear Flowers〜それぞれの正義〜
「それって……?」

レティシアがゴクリと唾を飲み、恐る恐る訊ねる。答えを知っているフィオナは淡々と答えた。

「売春目的の人身売買なら、お金持ちが大金を払って買います。だから身代金を要求する必要はありません」

「ひどいな……」

レイモンドがグッと拳を握り締める。こうしている間にも、女の子が誘拐されて売られているかもしれないのだ。早く助け出さなければ、この三人の身も危険だ。

「三人の名前、職業などを言いますね」

サルビアがそう言い、一人ずつ職業などをホワイトボードに書いていく。一人目は、シオンと同じ東洋人の女性だ。長い黒髪に桜色の唇をした華やかな顔立ちをしている。

「一人目の被害者は、サクラ・コノヤマさん。年齢は十九歳で、この国に美術を学ぶために留学しています。学校から出てしばらくしたところで、黒い車から降りてきた二人の男に捕まり、何かを注射されてそのまま誘拐されました」

フィオナの頭の中にその時の映像が流れ込んでくる。恐らく、注射されたのは麻酔薬だろう。
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