昨日、あなたに恋をした

 

 昼休憩の終わり頃。

 ベルゼブブ新太は給湯室で自家焙煎の豆を()いていた。

 その音と香りに、今日は誰が伝説の珈琲をいただけるのだろう、とこのフロアの社員たちは胸を騒がせていたが、新太もまた、落ち着かない気持ちでいた。

 さっき、誠孝の会社に行ったとき、帰り際に、日子が載っているという社報をもらったのだ。

 気を落ち着けてから読もう、と思い、豆を挽き始めたのだが、いつもよりすべての行程が微妙に速くなってしまう。

 いやいや。
 これではいい珈琲が入らないではないか。

 淹れ直そうかと思ったが、あまり長く給湯室を占領するのもよくない。

 いや、占領するつもりはないのだが、自分が淹れていると、女子社員たちが遠慮して入ってこないことが多いのだ。

 その代わり、何故か外から、じっとこちらを見ている。
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