転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~
 空っぽだった筈の外のバケツには、花が入れられていた。黄と青のヒヤシンスはとても美しく咲いており、水色のリボンがかけられている。
 咄嗟にあたりを見回したが、なにも探し出すことは出来ない。スーリアはバケツを重ねると、そのヒアシンスごとバケツを店の中に入れた。

「ねえ、リジュ。私が出掛けてる間、誰か訪ねてきた??」
「え? ──いや、誰も来なかった」
「そう……」
「なんで?」

 リジェルに逆に聞かれ、スーリアは足もとの今片付けたばかりのバケツを指さした。

「これ。売り物じゃない花がバケツに入ってたの」

 スーリアには一瞬、リジェルの表情が強張ったように見えた。しかし、次の瞬間にはいつも通りの様子になっていた。

「悪戯じゃないか?」
「そうかしら?」
「気味悪いなら捨てとくけど?」
「ううん。綺麗に咲いてるのに、捨てないわ」

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