秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
拓海は普段は見せない真剣な目で私をぐっと見つめる。
好きとかそんな感情はないはずだ。ない、はず。
それなのに…どうしてこんなにも心が揺さぶられるのだろう。

これは、演技じゃないっていうことだよね。

「そんなに驚くこと?」
「うん、驚くよ…」
「大丈夫、無理やり抱いたりしないから。多分」

そんなの当たり前だよ、と心で返事をして拓海がそっと私から離れる。
ようやく緊張が解けて私は大きく深呼吸をした。
拓海に触られた胸がジンと熱い。
…あのまま流されていたらどうなっていたのだろうか。


「拓海は…―」

拓海の視線が私に向かう。乱れた髪を整えながらボソボソと言葉を紡ぐ。

「芸能人じゃん、俳優じゃん、事務所とかって恋愛とか禁止にしてないの?」
「んー、全然。個人の自由」

意外だなと思った。彼のファンは女性が多いイメージだと思っていたから。
キスをしてしまったせいか、見ていた景色が一気に変わってしまった。
拓海の視線も距離も吐息も、心臓の鼓動も―…

何もかも違う。今までとは全部違う、どうしよう…―。


「どうかした?耳まで赤いよ」
「あー、ううん、何でもない」

私は咄嗟に彼から視線を逸らす。
”意識”することがこうも私の視界を変えるなんて…そんなの、知らない。


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