【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない

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市ヶ谷さんとおばあちゃんの昔の約束から始まった契約上の結婚。 だったはずなのに……。
それから一ヵ月、私達は沢山の時間を共有して思った以上に仲良くなってしまった。

私とは少し違えど、ちょっと普通じゃない家庭環境に育ってきた事。

昔から自分にも他人にも余り興味がない。 恵まれた環境にいながらもいつも疑問ばかり抱いてきた事。

インテリアが好きで自分のお店を造りたかった事も、そして私との結婚を条件にボヤージュの商品がカフェで食べられるお店を造る事を市ヶ谷さんに許可された事。

知れば知る程、彼への不信感はなくなっていった。 それどころか少年のような目をする、純粋な彼に惹かれ始めている自分がどこかにいた。

「真凛、行くぞ」

「はいは~い。待ってね。今準備終わります~」

「一体どれだけ準備に時間が掛かるつーんだ」

「私は伊織さんみたいに整った顔をしていないから、準備が大変なんですよ。なんせ普通なんですから」

だから初めての休日を作ってくれて、伊織さんが祖母のホームに一緒に行こうと言ってくれたのはとても意外だった。

私の家庭環境を訊いた彼なりの不器用な配慮だったのかもしれない。
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