虐げられて追い出された私、実は最強の聖女でした~聖獣と冥王と旅に出るので、家には戻りません~
プロローグ
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 その日は千年に一度、ふたつの月――銀月と金月――が完全に重なる日だった。
 銀色の髪と紫色の瞳を持つ聖女ツェツィーリアは、夜会が催されているウィリディタース王国宮殿の広間の大窓からふたつの月を見つめていた。

「ルイーザ、そなたとの婚約を解消する!」
 奇病に侵されたウィリディタース王国国王の快癒と、その病を治した聖女ツェツィーリアのために催された夜会において、王太子コンラートが婚約者であるヴェニゼロス公爵家の長女ルイーザに婚約解消を告げた。
 突然のことに、ツェツィーリアは振り向いてふたりを見やる。
 燃えるような赤い髪に青い色の目をした見目麗しいコンラートと、波打つ金髪に緑色の目で愛らしい容姿をしたルイーザは幼い頃に婚約を結んでおり、華燭の典を間近に控えていた。
 コンラートはルイーザには目もくれず、聖女ツェツィーリアのそばに行きひざまずく。
「私と結婚してほしい」
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