優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
多分、壱哉さんにしたら『またか』くらいなのかもしれない。
申し訳ない……。
会社に着くと、車を降りて壱哉さんが言った。

「怪我の手当てするからこっちに」

壱哉さんは手を引いて駐車場から社内に入ると守衛さん達や業者の人が使うエレベーターに乗った。
エレベーターは業者用らしく、廊下の端の目立たない場所にあり、そこから役員室があるフロアに入った。

「すごく大きな会社ですね」

「そうか?」

「はい」

窓の外には人が豆粒くらいにしか見えないし、他のビルを見下ろせる。
早く着いたおかげでぱらぱらと出勤してきた人達を窓から確認できた。
部屋に入ると、壱哉さんはロッカーから救急箱を持ってきて、テーブルに置くと蓋を開いた。

「あ、ありがとうございます」

どうして消毒液と絆創膏を持っているんだろう。

「足だして」

あ、足っ!?
壱哉さんにこの太い足を見せるなんてできない!
ぶんぶんと首を横に振った。

「自分でできますからっっ!!」

ストッキングも替えないと―――顔を赤くして言うと、寂しそうな顔で壱哉さんは言った。

「そうだな。昔と違うか」

「えっ…えーと、じゃ、じゃあ、お願いします」
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