優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「尾鷹は俺が杏美と結婚することで安島が尾鷹を裏切らないように監視する。安島は尾鷹の娘と結婚させて、その子どもを本家に対抗するための道具にする。君には理解できない世界だよ。きっとね」

「ば、バカにしないでくださいっ!」

理解できないなんてことない。
杏美ちゃんが結婚を喜んでいなかった理由がやっとわかった。

「杏美に言わないでくれるかな?」

「お、お断りします!」

「ま、言いたいなら言っていいけどね。杏美が傷つくだけで結婚することは変わらない」

「そんな」

「俺は君に感謝してるよ」

私に感謝?
なんの関係があるの?
そう思って、安島さんを見た。

「社長の椅子が遠いと思っていたけど、壱哉が君と結婚したいと馬鹿なことを言い出したおかげで、俺が社長になる可能性が出てきたんだよ。ありがとう。日奈子ちゃん」

「私と結婚!?安島さんが社長?」

「まだそこまで本人に言ってなかったか。あの壱哉が俺の下で働くことになるかもしれないなんて思ってもみなかったよ。あのお姉さんの方だったら、こうはいかなかったな」

じゃあね、と爽やかな笑みを浮かべて安島さんは去って行った。
何も言えなかった。
< 142 / 302 >

この作品をシェア

pagetop