優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
でもそれは『どうしてこんな子が?』と思われているからなおさらだった。

「壱哉さんも私のせいで色々言われてますから。頑張るつもりが壱哉さんの評判を悪くしてしまって、ごめんなさい」

「泣かなくていい」

顔を上に向けさせると、唇がこぼれた涙に沿って、涙をすくいとった。

「もういいから」

唇を重ねようとした壱哉さんに言った。

「壱哉さん。私、諦めたくはないです」

確かにダメダメだけど、もういいとは思ってなかった。
壱哉さんは唇を手で止められて、苦笑していた。

「わかった。俺に考えがある。でも、まずはキスをして」

止めた手をつかみ、唇を重ねた。
甘く優しいキスは私のやる気を元に戻すのに十分だった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


壱哉さんは私に言ったとおり、考えてくれた―――そして、今、目の前に無表情の今園さんがいた。

「先生!よろしくお願いします!」

「はい」

背筋をしゅっと伸ばした今園さんは会社がお休みの土曜日だというのにスーツを着て、髪のほつれが一本もなく、キリッとしていた。
隙がない。
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