優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「なにもやることがなくなるだろう?」

私から、布巾をとりあげられた壱哉さんが困っていると、それがおかしかったのか、シェフが笑った。

「壱哉も振り回されることがあるんだな」

「たくさんありますよ。特に日奈子には」

私?
壱哉さんはそうだと、うなずいた。
そんな壱哉さんを振り回すなんて大それたことした覚えはなかったけど

「そうかもなあ」

なぜかシェフまでもが、同じ思いだった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

私が担当する二日間を無事に終え、最終日は壱哉さんが手伝いに来てくれた人達に焼き菓子のセットをお土産に渡して、打ち上げとして豪華なケータリングサービスを注文してくれた。

「日奈子を助けてくれてありがとう」

壱哉さんがお礼を言うと、全員恐縮していた。
やっぱり壱哉さんは違う。
私もお礼を言ったけど、全然違っていた。

「いえっ!むしろ、専務からお礼を言われるなんて役得です」

「毎日、おいしい朝食や昼食をご用意していただいて」

「専務はやっぱりセンスがあるっていうか」

まあ―――ちょっとモテてるかんじもあるけど。

「契約もけっこうとれましたね」
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