優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「あと一時間で開場なのにまだ準備をしてるのか」

こっちの気も知らないで、のんびりと壱哉と日奈子の二人やってきた。

「専務!依頼していたタレントとモデルなんですが、手違いで来れなくて。シェフも。どうしたら」

壱哉に頼った社員を安島さんが睨み付けながら、投げやりな口調で言った。


「もうやる必要はないんじゃないか?イベントは中止でいいだろう」

社員達は動揺し、顔を見合わせた。

「招待した人達はどうなるんですか」

「適当に商品を詰めて、手土産に持って帰らせろ。そうだな。壱哉。お前が入り口に立って謝ればいい」

「どうして壱哉さんが!?」

日奈子が前にでた。
まるで子犬みたいに吠える日奈子を壱哉は後ろから『可愛いなあ』というように微笑んで眺めていた。

「いいわ。緋瞳とその友達を呼ぶから」

緋瞳のスマホに電話をかけると、声が震えていた。

「ちょっと、緋瞳?どうしたの?今から、きてほしいんだけど」

『無理。まぶたが腫れて、人前にでれない』

「なにがあったのよ」

『今日、発売の週刊誌に渚生(しょう)が恋人とホテルで食事をしていたって書いてあって』

そこまで、聞いてハッとした。
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