優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
口の端をあげて笑っていた。

「ちょっとね」

「事情がありまして」

私達の関係は意地の張り合いと腹の探り合い。
でも、時々は素直になって―――

「今園さんの名前、なんていうのか教えてくれる?」

小耶子(さやこ)といいます」

「いい名前だね。これからは名前で呼んでもいい?」

「構いません。私も名前で呼びます」

「うん、小耶子」

「渚生」

私も渚生も笑った。
おでん屋のおじさんは黙って聞いていたけれど―――

「おやじー!暑くてかなわねえや!冷酒を頼むっ!」

「こっちはビールだ!」

周囲で冷たい飲み物の注文が飛び交っていたのは何故だろうか?
疑問に思いながらも餅巾着を口に運んだ。
この後、私と渚生はお姫様を家に無事送り届けると、別れ際に彼がくれたのは、

「これ、俺の連絡先とスケジュール。また飲みに行こう。二人で」

プライベートな情報と私達が交わした初めての約束だった―――
< 270 / 302 >

この作品をシェア

pagetop