The previous night of the world revolution~T.D.~
「アリューシャ…生きて帰ってくるから…!待っててけろ!」

半泣きのアリューシャである。

何で方言出てんの?

「うん、待ってるからね」

アイズは、そんなアリューシャの頭をよしよし、と撫でていた。

…ルレイア辺りが見ていたら、「微笑ましいですね」とか言うんだろうが。

俺は思わないぞ。

むしろ恥ずかしい。

だって、考えてもみろ。

人様が大勢集まる空港の、搭乗口付近で。

別れの挨拶を交わす…までは、まぁよくあることかもしれないが。

大の男二人が、片方は半泣きで、片方はそんな半泣き男の慰めるように、頭を撫でている、なんて。

しかも、

「アリューシャあれだから…!生きて帰るから!靖国で会おうな!」

「アリューシャ。それだと死んじゃうから、普通に空港で会おうね」

こんな、アホ丸出しのやり取りをしている。

見ろ。通りすがった人が、くすくす笑ってる。

ちょっと、こいつらと知り合いだと思われたくないから、離れていよう…としたら。

「ルルシー」

そんな俺を咎めるように、アイズが俺を呼び止めた。

駄目だ。知り合いだって周囲にバレた。

「…何?」

「アリューシャのこと、くれぐれも宜しくね」

しかも、このお子様の世話を頼まれた。

保護者から直々に。

うん分かった、任せろ。と…言いたいところだが。

…俺は果たして、このお子様の世話、出来るのだろうか?

今まで、アイズしかお世話出来なかった奴を。

とはいえ。

人選としては、司令塔であるアイズが、ルティス帝国を空ける訳にはいかないので、こうなるのは仕方ないのだが。

仕方ないと、自分を納得させたのだが。

それでも、本当にこれで良かったのだろうかと、今更ながら思う。

「まぁ…努力はするけどよ…」

そう言いながら、チラッ、とアリューシャの方を向くと。

「うぉぉぉぉ!アリューシャは行くぞ!皆の者!万歳三唱で見送ってくれ!万歳、万歳、ばんざーい!」

などと、意味不明な供述をしており。

通りすがりの人にぎょっとされるか、くすくす笑われるか、怪しい者を見る目で見られている、このどうしようもないお子様を。

一体、どうやって面倒見れば良いのかと、俺は頭を悩ませていた。

万歳三唱で見送れとか言いながら、自分で万歳三唱してるじゃん。

すると。

「大丈夫だよ、ルルシー」

アイズが、笑顔でそう言った。

「…何がだよ?」

「何で私が、アリューシャを君に託したと思う?」

「…他に、人がいなかったからじゃないのか?」

「へぇ?君だったら、そんな理由で、大事な相棒を他人に託すの?」

「…」

…託す訳がない。

頼りにならない、信用ならない人物に、ルレイアを預けるくらいなら。

例え這いつくばってでも、自分がついていく。
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