劇薬博士の溺愛処方

 目の前で舌なめずりをされ、三葉は言葉を飲み込む。
 その瞬間、琉が首からぶらさげていた医療用携帯電話にRRRRR、と着信が入る。
 不服そうな表情のまま、琉は三葉から離れ、電話を繋ぐ。

「……大倉です。MRIの準備? でも、患者の意識戻りました……念のため、ですね、はい」

 電話を切った琉は、はぁ、と溜め息をつき、三葉に告げる。

「問題ないとは思うけど、これから看護師が来るからMRI室に行って早見先生に撮ってもらって。向こうで診察終わったらそのまま会計済ませて帰っていいから……まだ終電まで時間もあるだろ」

 俺は今夜当直だから、と淋しそうに笑う琉に、三葉も頷く。

「わかった……また、メールする」
「ん」

 こうして、つかの間の邂逅をしたふたりだったが、キスを交わすことも叶わぬまま、さらに深い夜を迎えることになるのだった。
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