劇薬博士の溺愛処方

 金曜日の夜九時半、ということもあり周囲には仕事帰りのスーツを着た男女の姿もちらほら見受けられる。
 ベージュのコートを着た三葉の手をぎゅっと繋いだまま、琉は堂々とホテルに入り、手早く部屋を取る。時間的に満室間近だったらしく、最上階の価格的にもいちばん高い部屋になってしまった。
 ふだん過ごすホテルの部屋よりもずっと高いです、と焦る三葉だが、琉は気にすることなく彼女をぐいぐい引っ張りエレベーターへ乗せる。

 ドアが閉まると同時に、琉は三葉を抱き寄せ、啄むようなキスをはじめた。ガラス張りのエレベーターが真っ暗な夜空の高みへ昇っていくなかで、三葉は軽い酸欠状態に陥りながらも、彼からの優しいキスを受け止め、三葉の気持ちも盛り上がっていく。


 カードキーで部屋の扉を開けば、そこは鏡張りの部屋だった。
 
「……!?」
「三葉くんも大胆だねぇ」

 モノクロのベッドと床以外、壁という壁すべてが鏡で構成された、まるでミラーボールの内部にいるような部屋のつくりに驚く三葉を見て、琉はくすくす笑っている。

「このホテル、全室共通の特徴があって、ベッドルームは全面鏡張りが売りなの、知らなかった?」
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