劇薬博士の溺愛処方

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 繰り返されるキスを受けながら、着衣を乱していた三葉は、琉の言葉を反芻して、ふ、と我に却る。

「……自慰を、見せ合いっこする!?」
「うん」

 顔色を変えた三葉を見て、琉はキスをやめて困った表情になる。

「あれ、飛鷹から聞いていない?」
「……そういえば」

 けれどもあれはお酒の席で酔っぱらったが故の冗談だと一蹴していた三葉は、琉に言われるまですっかり忘れていたのである。

「冗談じゃ、ないんですか」
「パートナー同士が自慰を見せ合いっこする相互観賞って実際にあるんだよ。行動療法、早漏対策の一環としててっきり飛鷹が説明したんだと思ったけど」
「だから実地演習は行ってませんってば!」
「知ってるけど思い出したら腹が立ってきた」
「ひゃんっ!」

 コートを剥ぎ取られ、すぽんっ、とセーターも脱がされ、あっという間にブラジャーとタイトスカートという格好にさせられてしまった三葉は、ぷう、と頬を膨らませながら琉の着衣を乱していく。
 上半身下着姿の三葉と、下半身下着姿の琉は、互いに破廉恥な格好を見て、くすくす笑う。
 鏡に映る滑稽な恋人たちは、道化のように、ベッドの上でキスを繰り返す。
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