劇薬博士の溺愛処方

「だからもう、彼女にちょっかいを出すのはやめろよ?」
「――大倉」


 気づいていたのか? と驚く飛鷹に、琉はふん、と鼻で笑う。

「悪い虫が寄ってこないか確認するのは恋人の大事な仕事だ……あれは俺のだからな」
「知ってるよ。彼女はお前のことしか見てないし、想ってない。だから安心しろよ。でもな……束縛しつづけていたらまた逃げられるぞ?」
「うっ……そこは気をつける」

 なんだかんだ、飛鷹も同い年の後輩が憎めないのだ。
 調剤部に入ってきたスタイル抜群の新米薬剤師に目をつけていたのは琉だけではなかった。けれど恥を忍ばず滑稽なまでに求めて手に入れたのは琉だけだった。
 そんな彼を知っている飛鷹だから、一途な恋情に巻き込まれた三葉が結果的に彼と関係を強めている姿を見て嫉妬してしまった。もしあのとき熱心に口説き落としたのが自分だったらと一瞬だけ考えてしまった。だからお酒を飲まなければ彼女を傷つけてしまいそうで怖かったのだ……結局それが仇になってしまったか。
 そのことを知っていながら、琉は飛鷹を牽制するだけだ。寝取るほどの勇気もないのだから当然だろう。
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