劇薬博士の溺愛処方
「三葉……」
「も、もう今夜は終わりですからね!」
「わかってるって……」

 逃げるようにシャワーを浴びにいく彼女を見送り、琉はスマホの通知を確認する。夜間当直前の飛鷹から、『よきクリスマスを!』というわざとらしいメッセージが届いている。もし自分より先に飛鷹が三葉を見初めていたら……そう考えるとモヤモヤするものの、自分のためにノーパンノーブラでデートをしてくれた彼女のことを思い出し、ほくそ笑む。
 
 
 ――縛りつけて閉じ込めて誰の目にも見せたくない、俺だけの毒薬……なんてな。
 
 
 本人に言ったら絶対に怒られそうだから、心のなかだけで呟いて。
 琉もまた、浴室へ向かう。


「琉先生まだシャワー使ってますって!」
「背中洗ってあげるよ~」
「そう言ってまーたいやらしいこと仕掛けるんでしょ?」
「期待してるの?」
「してませんっ!」



 シャワーの音が鳴り響く浴室に、仲睦まじい恋人たちの影が重なり合っている。
 聖なる甘いふたりの夜は、まだ、はじまったばかり。



“劇薬博士の溺愛処方”クリスマス番外編『聖夜の靴下は博士の毒薬』 fin.
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