劇薬博士の溺愛処方
 驚きの表情を見せた琉だったが、三葉が必死になってキスしてきたのを悟り、不適に笑う。
 人前で、濃厚な口づけをつづけていたら、酸欠状態だ。
 

「どう? 美味しい……?」


 こくこくと頷いたのは、琉ではなくて、なぜか三葉の方で。
 思っていたよりも、ずいぶん長い、チョコレート味のキスだった。
 
「そっか。良かった」

 してやったりの表情で、琉は三葉の手をつなぐ。
 彼のおおきな手は思っていたよりも冷たかった。もしかしたらずっと前から待ち合わせ場所で待っていたのかもしれない。
 三葉は申し訳ない気持ちになりつつ、ご機嫌になった彼とともにいつもと同じ、歌舞伎町の裏路地にある小さなラブホに足を運ぶ。琉はふだんと違う場所でもいいんだよと笑っていたが、明日も仕事があるからと、三葉が望めば、素直に了解と応答する。

「その代わり、ホワイトディは覚悟しとけよ?」

 バレンタインの今日はあくまで三葉が琉に気持ちを届ける日だから、やりたいようにして構わないと言いたいらしい。
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