秘密の秘密は秘密じゃないのかもしれない
各駅停車に乗りこみ座ると、すぐ隣にスーツの男性が座ってきた。

ふと目線を上げると課長だった。

「?!課長?方向違いますよ!課長は山手線反対周りに乗らないといけなかったのにどうして京王線にいるんですか?」

私がギョッとして声を上げると、課長は指を口に当て「シッ!」という。
電車の中なのに声が大きかった…。慌てて口を掌で塞ぐ。

「真帆酔ってるだろ。気になって見に来たんだ。電車の中で寝るだろうなと思ったら心配でさ。この前も酔って寝落ちしただろ。」

「そうでした…ご迷惑をおかけしました…。」

「迷惑とは言ってない。心配だと言ったんだ。寝て高尾山にでも行っちゃわないかと思ってさ。」

「ご心配おかけしてすみません。一気に目が醒めました。もう大丈夫です。課長、引き返してください。」

「ここまで来たんだ、送ってくよ。」

「まさか!そんなことできません。」

「真帆、気にするな。」

さっきからの真帆呼びに私の心臓は壊れそうなほどに強く脈打つ。
本気で酔いは醒めた。
醒めてしまった。

大丈夫と言う私を信用せず言い合いを繰り返しているとドアが閉まり出発してしまった。
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