キミを描きたくて
事の発端は、数日前のこと。


「えぇ、人物画...?」

「依茉ちゃん、抽象画しか描かないでしょ」

「だって、楽しいもん」

「せっかくだし、非抽象も書いてみたら?」

「う、うん...」


3ヵ月後の学祭で、この美術室では絵画を飾る。

部員7名と少ないこの部活で、1人3枚は描くことになっていた。

そして、そのうちの1枚を、誰かにお願いして人物画にしようと言うのだ。


「ね、画材はなんでもいいから!
木炭でも水彩でも油彩でも!」

「わ、わかった...でも、断られたら」

「...そしたら、私に言って!
他の事考えるから」

「わかった、ありがとう」


人に話しかけることが苦手な私は、心底不安しか無かった。

どう説明しよう、どう来てもらおう...

というかそもそも、どう見つけよう。そう悩んで、数日が経ってしまったというわけである。
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