御曹司がくれた甘い魔法

翌日、会社に出社すると、後ろから真理子が凄い勢いで駆け寄って来た。



「芽衣、今すぐ隠れて!!」

「----つええ?」


私が振り向いたときは、もう遅かったようだ。
高宮部長達が、私を待っていた。
真理子は、先にその事を知っていたのだ。


「木下君、おはよう。」


声を掛けたのは、昨日バーベキューでお会いした高宮部長だ。
その横には、清楚な雰囲気のお嬢様が一緒にいた。

そのお嬢様は私の真正面に立った。


「初めまして、あなたが木下芽衣さん?」

「-----はい。」


何か張りつめた様子に嫌な予感しかしない。
その予感は的中した。

私が返事をした直後、大きな音と左頬に衝撃と痛みが走る。

私よりも先に、隣にいた真理子がキャーと悲鳴を上げた。
私は何が起きたか、一瞬わからなかったが、頬の痛みから平手打ちをされたのだと分かった。
お嬢様は怖い顔で私を睨んでいる。


「私が藤堂優斗さんと結婚するはずだったのに、この泥棒猫。」


さらに私に掴み掛ろうとする。


「何をしているんだ!やめろ!」


止めに入ったのは、優斗さんだ。
優斗さんは、朝から外出のはずだった。

高宮部長は優斗さんが来たことに驚いている。


「藤堂、今日は大事なプレゼンがあったのではないのか?」

「こんなこともあるかと思って、先方には朝一番で連絡を済ませてある。」



優斗さんは、お嬢様の手を掴み、私から引き離した。



「小早川さん、なぜ芽衣に八つ当たりするのですか?私はたとえ芽衣が居なかったとしても、あなたとは絶対に結婚しない。」


小早川と呼ばれたお嬢様は、優斗さんに抱き付いた。


「優斗さん、私はあなたと結婚するのが夢だったの。考え直してほしいわ。」


優斗さんは、小早川さんを冷たい瞳でじっと見ている。


「小早川さん、俺から離れてくれないかな。君の顔は見たくもない。」


横で黙って聞いていた高宮部長が、優斗さんの前に立った。


「藤堂君、こんなことが許されるのかな?君のお父さんが泣いているよ…」

悔しそうな顔をする優斗さんを見て、高宮部長はニヤニヤと勝ち誇った顔をしている。


「誰が泣いているのかな?」


低く通る男性の声が後ろから聞こえて来た。
その男性は、ゆっくりと近づいてくる。


「社長!どうしてここに…」


高宮部長は、目を大きく見開いて驚いている。
その声は、優斗さんのお父様であり社長だ。


「高宮君、僕は優斗と小早川さんの結婚を望んだことは無いぞ!」

「社長、よく考えてください。今後の会社の為にもこの婚礼は大きなメリットですよ。」


社長は呆れた顔で、ゆっくりと首を横に振った。


「高宮君、この会社をバカにしないで欲しいな。そんな政略結婚が無くても、この会社はビクともしないよ。君は僕のことも、優斗のことも侮辱しているのと同じだ!」



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